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特集記事

Vol.236 -- 2019 年 12 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」 徳川文武

第百二十七回 曲がったキュウリも料理すれば同じ

 日本人は世界でも清潔好きで、こと売り物については、汚れや傷物が嫌いで完全主義者だ。大都市でも、小さな八百屋に行くと地元の農家から仕入れた野菜や果実を売っている。それらは新鮮ではあるが粒が揃っていない場合も多い。一方、系列化された食品店では物流倉庫から配送され地方の農協から規格化された大きさも形状も揃った箱入りの農産品が売られている。

 不揃いの果実や曲がったキュウリは大都会に住む日本人にはあまり好まれないが、私は気にしないで買う。その理由は、料理するとそんなことは気にならなくなるからだ。野菜を料理するときに切るので、外観が問題になることはない。農協では箱に入るような寸法の農産物を選んでいるからだ。入らないものは、寸法外や形状外として除かれ、地元で消費されるか廃棄されるから無駄が出る。また収穫過剰であれば市場価格が落ちないように廃棄される。

 米国もカリフォルニアは農業州で農作物が豊富だ。シリコンバレイ地域では、セイフウェイと言う食品市場が主流だが、売値は安定している。ここ十年来テキサスから入ってきて来たホールフーズは、やや高価な商品を売っている。さらに以前からカリフォルニアでパーティ用の食材を売ってきたトレーダジョーズは、自社ブランド品をやや低価格で多数販売している。米国の農産品小売店は、日本のように生産過剰でレタスなどが半額になることはない。収穫が不足する時にもレタスの値段が倍になる代わりに、数量が少なく早く売り切れるだけである。一方、日本と米国の客の「選り取り」を見ていると、東洋系人の客(日本系、韓国系、中国系)は外観の良いものだけ選んで買い、欧米系の客は外観にはあまりこだわらないで買う。

 次は外食の完食率の事で、日本での外食では客の食べ残しや調理場で食材の不要部分の切り落としも多く、食材産業から生じる全国の食品廃棄物は、毎年千七百万トンに及ぶと言われている。米国では客が注文して支払った食べ残しを持って帰るのは客の権利で、犬にやるからと包んでもらう。日本では、食中毒で訴えられるのを恐れて居食屋が客には食べ残しを渡さない。国民のふところも格差は広がる一方で、その日の食事に不足する人々多い。私見では我々日本人は現在世界でもっとも無駄が多い国民だと感じている。仕事も残業が長いのに効率が低いと批判されるのも残念だ。働き方改革と喧伝されても大企業や官庁以外は一向に実質的残業は減らない模様で、その影響か、私の地元を通る田園都市線の帰宅する乗客の増加はすごい。もちろん朝の出勤時の混雑も緩和されてはいない。

 近年、地球規模で極端な気候現象が増加しているように思われる。でも太平洋戦争直後は私の小学校時代で、首都環状六号線外側のがけ地に自宅があったが、夏休みの終わりごろに台風に見舞われ二階の屋根瓦が吹き飛び父と一緒に修理するのが大変だったのを想い出す。この頃はまだ敗戦から環境基盤が整備されていない頃で、台風であちこちに洪水が起こった。さて農地が災害に見舞われると、出荷できる作物が減ったり、なくなったりする。そのような状況では、災害を受けなかった地域の消費者は、通常よりは少し高くても「義援商品」として製造した「訳あり農水産品」を購入して災害復旧に協力する。もちろん「故郷納税」でこれを行うこともできる。

 災害地からの農水品の宅送は、個別輸送になるので輸送費がかさむ難点がある。それよりも消費者の住居地に近い販売拠点へ出向いて購入する方が売り手に多くの利益が残る。

1.野菜なら漬物やピクルスなどの加工食品(緊急時用の備蓄食品など)
2.果実なら缶詰めやジュースなどの加工食品(緊急時用の備蓄食品など)
3.菓子に利用できる果実は現地で加工する
4.海産物なら缶詰めに加工する

 「災害時の地産品」は大都市のアンテナショップや駅内店で販売するようにすれば、梱包や託送料金が高い日本でも災害地の利益が残るような販売が出来るだろう。このためには、災害情報の把握と災害地との連携する非利益法人との連携が必要になる。消失した沖縄の首里城の復興資金数億円が集金できたのも、情報技術の進歩のおかげである。「災害時の地産品」は大都市の企業の部署で入手しても良いだろう。そのような食品を社内ピクニックに使ってもよいし、税法上許されるなら、政党の資金集めに販売できるだろう。

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