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特集記事

Vol.293 -- 2024 年 09 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」 徳川文武

第百八十四回 米国ネットサービス企業の票田

 周知のように、従来の電気リレイや真空管に代わって、ゲルマニウムやシリコン単結晶の基体を使用した固体回路素子である「トランジスター」が一九五六年、ニュージャージー州にある米国のベル電話会社の研究所で三人の研究者、ピアース、ショックレイ、バーディーンによって発明され、彼らはノーベル賞を受賞した。ショックレイはカリフォルニア州マウンテンビュウに移り点接触型トランジスターの生産工場を建てた。周辺では現在もある論理素子(ゲイト、デジタル製品)の集積部品をはじめ、種々の半導体が試作され、半導体応用部品は急速に実用時代に入った。目標は半導体基体に「高密度」に多数の回路を「集積」し「高速で動作」出来るかであった。半導体結晶の基体は円形の円形薄板でウェイファーと呼ばれ、その表面に線状の電子回路が形成される。この回路の幅が「密度の標準でミクロン単位で表現」される。一九六〇年頃は四ミクロンが標準の一つであり、ウェイファーの直径は四インチ位だった。それが現在は十二インチになったので、このウェイファー上で引き回せる回路の線は大まかに言って、十倍の大きさのウェイファーに二百万分の一の幅の回路パターンを乗せることが出来ると言うことになる。勿論、ウェイファーに描く回路は傷などがない歩留まりの必要がある。そのためには、ウェイファー上にごみやチリがないように表面加工をする必要があり、製造ラインの清浄度はごみやチリの数で表現する。一枚のウェイファーから超多数のチップが出来上がって来るので、大量に製造され半導体チップを大量に販売しなければ利益が出ない。半導体の生産ラインは、ひと頃一本で百万ドル単位だと言われていた。

一九八〇年頃のシリコンバレイ起業者たち
 この頃スタンフォード大学の工業団地に東海岸の複写機メーカーゼロックスが複写機を中心にして未来のデジタルオフィスの構想を立てていた研究所PARCがあった。その中にはいわゆるマウスの原型があった。そこに、何と将来のアップルコンピューターの創始者の一人であるボズニアックとマイクロソフトの創始者のビルゲイツが出入りしていた。現在シリコンバレイのマウンテンビュウにあるコンピューター博物館にはアップルコンピューター社が売り出した時の人気卓上型PC(個人用コンピューターAPPLE Ⅱが展示されている。アップルコンピューターにはPARCのマウスが使われていたと言う。一九八二年には海岸にある事務機メーカーIBMも同様な試作機を組み上げた。IBMはブラウン管モニター画面に電動タイプライターで表示されるコンピューターは販売していたが、持ち歩き出来る卓上型のコンピューターは販売していなかった。ビルゲイツはハーバード大学の学生だったがBASIC言語のインタプリータを売り出した。初期にWord Star と言うワープロを売り出し人気があった。そのほかVisi Calcと言う会計ソフトウエアも販売したと言う。一九八五年に行毎入力方式のウインドウズ1を発売した。一九九〇年頃のPC用ソフトウエアの問題点はTCP/IPプロトコルで更新できるブラウザの闘争だった。西暦二千年の読み替えも会計ソフトでは問題があった。マイクロソフトオフィスは買い切り、無料ダウンロード、プロダクトコード付きなど。動作環境によって処理速度が違ったりする。最近のウインドウズでは買い切り製品は姿を消し、ソフトの使用料が期間限定(サブスクリプション)に移行している。マイクロソフトの言い分では、使用環境が変化するので長期間機能を保証できない、と言うのは良心とも取れるが、数年間しか使えないようにして、その値段は高すぎると言う言い分もありだろう。GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)は機能の使用料を期限付きにして、使用者の個人情報は提供情報サービス企業が広告会社などに密かに売りつけるのは不当だと言う使用者の意見でもある。事実米国のネットサービス企業は英国の市場会社に超高価に売り込んだことが国際報道で暴露された。

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