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第二次安倍内閣は十二月解散・衆院総選挙で大勝
第二次安倍内閣は先の十二月に国会を解散し、衆議院総選挙で自民・公明の与党は議席三分の二以上を獲得した。しかし、投票率は五割を僅かに超えると言う過去最低だったので、候補者選出制度ともあいまって「自民党が絶対的に支持された」と言う訳でもない。金融緩和は円安と国内株高をもたらし、お家芸の公共工事による箱物政策も復活したので、恩恵に与った有権者たちが忠実な支持者として自民党に投票した結果である。これでさらに四年間の政権保持が視野に入ったわけだが、山積する諸問題をどう解決するのか。領土問題、防衛協定、貿易協定、エネルギー資源、国内財政、原発(災害復興、災害収拾、運転再開)、人口減少と移民問題と社会福祉政策、国家経営への国民の関与など、多くの問題は相互に関連するので単独解決はますます困難になる。私が最近日本の政治と外交と経済に関心を持って以来、総理大臣の外国訪問動向に注目している。もちろん国家機密もあるから何でもテレビで報道され、国会で討議されるわけではないが、安倍総理大臣が先頭を切って多くの外国を訪問し事業団体と共に精力的に売込みをするのは見事だ。
有権者の意見は政治に反映されるのか
選挙の目的は、有権者の意見を代表(公約)する候補者を選ぶことだ。年配者の投票率は比較的高いものの、若者の政治への関心は低く、彼らの多くは投票に行かないと報道される。若い有権者の意見を少しでも多く反映しようと、選挙年齢を下げる検討がされているようだが、もっと若者に政治活動を説明する努力が必要だ。現在日本の「議会制民主主義」は、国民の意思が十分反映されず、議員たちは利権追求に焦点があるように見える。国会議員は官僚と同様、国民が雇っている「国家公務員」であるのに、「特権階級」になっているのではないか。国会議員は国民の要望に対し、自分たちに不利なことを議決しないのでは困る。また日本の総理大臣は英断を下そうとしても、米国の大統領のような強権をもたない。総理大臣は、適任者を活用や育成もせず、何でも自分が委員長になるから、持ち時間がなくなる。「識者会議」は総理主催の御前会議となり、結論先にありきの判断が下されることは周知の通りだ。日本には世界的な頭脳が多いのに、支配者に都合が良い人材ばかり集めるのでは、物事に進展はない。典型的な例として、国や企業の利権が絡む原子力諸委員会の評価は歪められる。もっと専門家を育てて任せる欧米式のやり方を学ぶべきだろう。
同一労働同一賃金の実現を
日本国民は、経済的に安定した平和な生活を好む。経済が不景気に入ると、企業は経費節減のため、人件費を圧縮しようとする。そのため雇用を減らすか、安く雇用できる非正規労働者に置き換える。企業の要請に対応して非正規労働者(パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など)の制度化が進んだ。厚労省の統計による非正規労働者数は、バブルがはじけた一九八九年(平成元年)には労働者全体の十九パーセントだったが、二〇一三年(平成二十五年)には三十七パーセントになった。欧米では賃金は仕事の内容で決まるが、日本では賃金は労働者の資質により決まる。だから、欧米で行われている「同一労働同一賃金」が日本では通用しない。今秋、野党四党は「同一労働同一賃金」の推進法案を衆院に提出したが、成果に期待したい。
欧米のように「同一労働同一賃金」でない日本の「非正規労働者」は、正規労働者に比べて、賃金が大幅に低く、福利厚生の恩恵がなく、雇用者の都合により解雇される悲惨な立場に立たされている。さらに今回の「派遣労働法改正」により、労働契約期間の制限が外されたため、派遣労働がいつまでも継続できるようになった。安倍総理は、新政権によって雇用が百万人創生したと言うが、利益を最優先するのが企業であり、企業が人件費を減らすために次のようなことが起こる。例として、「金がかかる」二人の正規雇用をなくし(定年で消失する二人の雇用の場合も含む)、「金がかからない」三人の非正規雇用を創生する。結果として、単純な雇用統計では、二人が三人に置き換わるので、「雇用人数が五割増加」したことになる。もちろん新たな三人の人件費は、もとの二人の人件費よりも節減されるためにおこなったのである。今年の新卒内定数は、前年に比べても一割以上改善したと言うが、問題はその内容なのだ。見かけではなく,内容の充実を世に問うて欲しいものだ。デフレ脱却は、昨今、食料品の値段が二割以上上がることで実現するのではなく、前よりゆとりを持って買える収入増加へ向上しなくてはならない。