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特集記事

Vol.155 -- 2013 年 03 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」

第48回<オリンピック招致、レスリング競技の除外、学校運動部の指導暴力>

この三つの課題は、現在の日本にとって、重要な課題を投げかけているように思える。第一にオリンピック大会招致は辞退して、発展途上国に順番を譲る方が良いと思う。第二にレスリング競技がオリンピックの除外候補に上がったのは、スポーツ界で日本の民間外交力が足りなかったためでもある。第三に学校運動部の指導者による暴力がなくならないのは、日本社会の隠蔽体質、すなわち、「面子」重視が変らないからだ。何をどう改善すべきかは自明だと思う。

オリンピック招致
東京がオリンピック大会の開催に経済効果を期待しており、関心を持っているのは、報道企業、スポンサー企業、観光や商店街などだろう。わが国がオリンピック大会を初めて開催したのは一九六四年で、太平洋戦争に惨敗し経済復興に弾みがつき始めたときだった。そのとき、首都東京の施設や交通網はまだ十分ではなく、この大会と一九七〇年に大阪で開催された世界万博で、東京と阪神地域の活性化が見事に実現した。そののち、冬季オリンピックは一九七二年に札幌、一九九八年に長野で開催された。今回は、デフレからの脱却のためもあり、景気浮上にオリンピック招致を思いついたようだが、私はその前に優先する制度改革の問題が山積していると思う。利権の食合いで箱物建設が殺到、便利にはなるものの、ますます巨大都市化する東京の住み心地は悪くなり、非人間的な環境に変っていく。一例として、欧米と違い日本では、相続のたびに、都市部の土地の区画が細分割され、太陽の恵みは減り、道路の割合がどんどん増える。根本的解決をせず、お家芸の改善の連続で、都市計画はすでに「無理の限界」を越えている。別の例では、増える不法運転の自転車から狭い歩道を歩く赴pン逑者保護のため、やっと道交法が改正される。要するに、大都市は混み過ぎているのだ。

レスリング競技の除外
レスリング競技がオリンピック種目から外す候補になったと言う報道は、多くの日本人を驚かせたが、オリンピック本部のレスリング連盟長の手落ちで認識していなかったと言われる。このような状況は、先刻アルジェリアの天然ガス工場での暴動で日本人作業者が殺害されたことや、韓国と中国が連携して日本の海上領土の所有を主張したこと、日中の農業開発支援で中国スパイの暗躍が表面化したこととも共通している。それは、「知らない間」に重大事が起きていたと言うことである。「緻密で頑なに古い制度を守る日本」では、しばしば、「思いがけないこと」が起こる。これを我々日本人は、言葉の壁、文化の壁があるからだと言い訳する。現代の外交で最も重要な要素は「確実な情報の取得」である。アルジェリア事件がテレビ報道で取り上げられ、大々的に座談会も放映されたが、席上で識者が「日本には諜報機関はない」と言う状況は困る。情報は国の興亡を決める。「人間はみな善人です」、「言わなくても分かってくれます」では、日本は滅びる。米国陣営の傘の下で批判罵倒するのではなく、回教革命団や北朝鮮と直接交渉する政治外交力を日本が持たなければならない。

学校運動部の指導暴力
いじめや暴力が原因で、若い生命が自殺により失われたのは、まったく痛ましい。そればかりか、オリンピック選手団のスポーツ訓練における暴力的指導は、先進国としては「国辱的現象」であり、欧米の指導者を驚かせた。ここで重要なことは、第一に生徒に暴力的指導を行う教職員がいること、第二にその事実に対して学校側は教職員に再発防止対処を十分にしないこと、第三に暴力指導の事実を学校側が面子のために隠蔽することだ。さて、儒教は政治思想、仏教は宗教として、六世紀に百済から日本に渡来したが、倫理道徳としての儒教は聖徳太子の時代から江戸時代を経て、現代の日本社会に浸透している。日本の支配者が好んだ「年功や地位による社会秩序」の根幹をなす。現在の日本社会は欧米キリスト教国の社会と異なり、「面子」を重んじる社会になってしまった。学校側は教育委員会に対して、教育委員会は文部科学省に対して、問題があることを隠すため、何十年にもわたり、指導者が生徒に暴力をふるった事実に嘘を言いつづけてきた。このように文部科学省が「面子」を重んじる、歪んだ教育を温存する限り、日本の教育改革は進まない。文部科学省を頂点とする教育の支配関係、上下関係が優先して、予算の認可、採用昇給のさじ加減、運動部における指導者により暴力を伴う生徒の服従、教師と生徒の親分子分関係などが起こり、本来の教育の目的は達成できない。日本で作り上げた「面子優先の儒教解釈」を改める時が来た。

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