Vol.129 -- 2011 年 01 月号
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第22回<贅沢ではなく、豊かな国の実現を>
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江戸時代以来、いや、もっと前から、我々日本人の眼は外国の有様に向けられていた。六十年以上前に民主主義国家として、新たに世界の仲間入りをした日本には、社会福祉では北欧諸国、市場経済では西欧と米国と言うお手本があると考えられていた。だからこそ、不動産バブルで財政が崩壊するまでは、社会福祉は順調に進んだように見えた。健康保険の掛け金で作った膨大な不動産投資は、社会資本の蓄財にはならず、不動産業と建設業に過剰な現金を落し、役人の天下り先を確保して将来への負担を増やした。工業製品の輸出が順調に伸びて日本は大きな蓄財をした。でも溜まり過ぎた金を不動産や企業買収や美術骨董品の買い漁りにおろかにも使い果たしてしまった。こんなに景気が悪くても、我が家の周辺には次々と豪邸が建ち、どれもが高級外国車を車庫に入れている。日本人の心のそこには、「ゆたか」であるよりも「ぜいたく」をしたいと言う潜在意識があった証である。
米国で街を歩いてグッチのバッグを持っている女性に出会うだろうか。サンフランシスコ空港のアジア路線通路には高級皮物店が一番手前に位置している。買うのは日本人と中国人ばかり。四、五十年前から、日本の農作物戦略は方向転換をし始めた。同じりんごを作っても単価が安く農家の収入に結びつかないから、美味しくて大きくて高価なりんごを品種改良で作った。同じ味噌や日本酒で競争するよりも、手作り品を作れば高い値段で売れる。米国の食品売り場では相変わらず小ぶりのりんごが良く売れている。小さいが味が濃く酸味もあり、私の大好物だ。日本では超速新幹線が実用に入ると言うが、私は大反対だ。今までの新幹線で三時間のところを二時間で行くことが出来て何が得になるのか。東北新幹線で一等車と言う豪華な車室ができたと言うが、利用するのは議員ばかりだろう。超速新幹線の試作には膨大な国家補助があったと思うが、そんなことよりも予算が優先される事業はいくらもあったはずだ。
現時点で見ると、国民が生活に満足している国は疑いもなく北欧諸国である。これら国の特徴は国民が贅沢好みでない点である。でもこれは彼らの性格なのだから変えようがないが、共通しているのは新教キリスト教国家であることだ。一方日本がお手本にした米国も新教キリスト教国家ではあるが、その背後にユダヤ系の金権勢力があるのが特徴だ。米国を経済的に躍らせ、米国を世界最大の軍事国に仕立て、米国が世界経済を支配しているのは、ユダヤ系の人々の活動である。日本は北欧型国家として成長する選択肢は今も残されているが、米国型経済国家を目指すのが諦められないために、現在のように国民が苦労するのだ。わるいことに、我々日本人には「平均的な米国人の生活の姿」が理解できていない。かれらは思いのほか質素で実直な生活をしていて、贅沢好みではない。それは米国が移民とキリスト教基盤の社会で成立っているからである。だから事業で成功した富豪が社会に大きな資金援助をする。
日本の政府閣僚が有能な日本人の頭脳をもっと活用すれば、現在のように国会の貴重な審議時間を、つまらないうちげばの茶番劇に浪費せずに、次々と必要な法案を可決できるだろう。今の議員たちは、国民の平均所得の五倍以上を国民の血税から受け取っているのだから、このさい、議員報酬を一律半分以下にするか、まじめに責務を果たすことを約束してもらいたい。北欧の例を見れば、黒塗りの車もグリーン車待遇も航空一等席も必要はない。議員定数削減は報酬を下げることではないから、国民としては受け入れるわけには行かない。私は日本の議員たちが多くの国民を使ってまじめに仕事をすれば、国内に数多くの職が創生されると信じている。日本の景気は必ずや改善する。そのちょっとばかりの工夫が実行出来るかどうかが、今年の最大課題だろう。最低の収入で最低限の生活水準が保障できる政策が必要だ。
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