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特集記事

Vol.271 -- 2022 年 11 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」 徳川文武

第百六十二回 ウクロシアショック

 国際通貨基金によれば、二〇二三年度の世界経済予測は成長率三パーセント以下で、二〇〇八年に米国で起きたリーマンショック(米国の投資銀行の破綻を契機に拡がった世界的同時不況)以来初めての複合的原因による「不景気」である。この主な原因は「新型コロナ感染症の蔓延」と「ロシアが引き起した隣国ウクライナに対する無差別侵攻」である。私はこの不景気を「ウクラロシア経済異変」又は「ウクロシアショック」と呼ぶことにした。

第一の原因は、二〇二〇年に中国湖北省武漢で新型コロナ感染症が発生して世界中に蔓延し、今月現在の統計では約六億人が罹りその約一パーセントが病死した。感染力が強い伝染病なので、人間の移動と接触を大幅に制限する必要があり、経済活動が大幅に減退し、社会基盤が機能不全に陥った。第二の原因は、今年三月にロシアが始めた隣国ウクライナへの侵攻で、多くのウクライナ一般住民が殺傷され生活環境の破壊が続いている。EU諸国とその連携諸国は、ロシアへの経済制裁としてロシアからの「エネルギー資源」の輸入を大幅に削減発動した結果、これらの国は、割高のエネルギー資源の大半をロシア以外から調達する羽目になり、経済の大混乱を招くこととなった。冬季を目前に代替の購入先と輸送方法を決定するのは容易なことではない。そのため、これらEUの来年の経済成長の見通しは、日本の一.六%に対して〇.五%と低い。

日本の経済成長率
大平洋戦争後の高度経済成長として一九五八年から一九七一年まで「岩戸景気」、「オリンピック景気」と何回かの景気の直後に国際収支の悪化で不景気が起こった。それでも日本経済は好転し、国民総生産GDPは一九九七年から二〇一一年の間、世界第二位を保った。翌年、中国のGDPは第二位で日本が第三位に転落、東日本大震災・大津波、年末に発足した安倍政権は第二次から第四次の二〇二〇年まで継続した。当初数年、景気は好転、のち停滞経済から脱出する目途が立たない。大勢として国民の収入格差は広がり、大企業の社内留保金は増え続け、脱落する中小企業も後を絶たない。

日本経済に逆転の機会あり
 外国人に「日本の景気はどうか」と聞かれたら、私は「日本には人手があれば仕事はある」と答えるだろう。現在の日本経済は、相変わらず「低賃金」で新型コロナ以来「みかけ不景気」で「人手不足」と言う状況だ。しかし、「人手不足」は「需要」があり「景気上昇の余地」がある証拠だ。これを克服するには、政府が必要な制度や予算を準備し、企業や個人がその制度を活用して「製品やサービスを製造販売」してそれを政府や企業や個人が買えば経済は回る。政府に望まれる制度の整備は色々ある。

 「人手不足」の解決には様々な方法で対応が可能だ。まず最初の切り分けは、機械作業化(無人化や人口頭脳化)と人間作業化や最適化されていない作業手順だろう。例えば、「役所の仕事の仕方」を根本的に変えることが必須である。それは素人の私から見れば、「省庁の権益の壁の除去」、「公文書管理法の遵守」、「国民カードの実施などデジタル社会基本制度」、「外国人技能研修制度と外国人管理制度」、「外国人のための標準日本語」その他、先進国で実行している制度の採用である。これができないから、日本は何時でも日本独特で世界に通用しないことを続けるのだ。政府と地方自治体と国民が上下関係にあるような国は生き残ることが出来ない。 「人手不足」の解消は出来るところから始める必要がある。従来の低い賃金は、従来の低い作業効率に対するものだから、作業効率が上がれば、その分かかる時間が減るので、実質的には賃金が上がったことになる。「人手補助の技術開発」や「人手補助の制度開発」のような仕事も雇用を創成する。食堂、ビル清掃、農園、建設工事、公園作業、家政婦などの仕事は人気がない。その解決には「機械による自動化」を積極的に進めるべきだ。その開発の投資を惜しむなら、当面は最低賃金から外した特殊作業として賃金を決めればよいし、日本人が望まない仕事を外国人にやってもらうなら、それなりの高賃金や社会福祉や特殊ビザを準備すればいいが、不法な仲介機関に任せるのは良くない。しかし今までは任せてきた。これも「人手不足」の仕事として雇用の創成に回すべきだ。そして「従来の入札」の条件である「低い落札」の悪習を直す必要がある。

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