特集記事
徳川文武の「太平洋から見える日本」
第百四十九回 インターネットと情報の氾濫
どこへ行っても、スマートホンや携帯電話と言った通信端末にしがみついている人で一杯だ。しかし現在のインターネット情報は同じ内容の情報を大規模に拡散するため、利用者はこの「重複した情報」の検索結果に追われていることが問題だ。インターネットの世界でも、物が有り余る無駄と同様に、情報空間はゴミ情報で一杯だ。狭い歩道を自転車で走りながら「スマホ携帯」を読んでいる人、と言うか、「スマホ携帯」を見ながら自転車に乗っている人が結構多い。まるで人々は「スマホ携帯」から出る魔術にかかって動くように見える。私が情報を送受する道具は、テレビ、固定電話、たまに携帯やラジオ、パソコンまでで何の不満もない。私はスマホを持たないので動画やゲームには無縁だ。車内では本をよく読むし、毎月原稿も書く。私には自分で自由に使える時間がいくらもある。
何かを「しても」、「しなくても」、時間は同じように過ぎる。新聞には地上波テレビと衛星テレビのどちらも十局ほどの番組が載っている。そのニュース番組の内容の多くは似たような内容だが、日本のテレビ局独自の制作だ。各テレビに同様なニュース番組が放映されるのは、「表現の自由」だが「無駄」に見える。放映時間は広告主が払う広告料でまかなわれる。米国のテレビ局には、全国と地元のニュースがあり、毎日何回か放映される全国ニュースは、ニュース会社の配信番組を使用する。その他は地元ニュースと政治評論家が制作する解説番組やテレビ局の特設番組とBBCなど海外の特別番組を流す。放映時間は商業広告の料金でまかなうが、日本の商業広告のように手の込んだ広告は使わない。
統計によると、子供の生活時間の多くが「友達との会話」や「ゲーム」に使われるため、親や学校は、子供の健全な成長が阻害されると心配する。民主主義社会では、「個人の行動」は「本人の判断」に任せるべきだと言う「原則」が尊重される。しかし結果は、子供は「スマホ携帯」を長時間使うため勉強が疎かになり成績が落ちる。子供の親や子供を教育する学校は、その子供の「スマホ携帯」の「使い方」を指導する必要があると考える。どこの国でも子供は親や学校が望むようにはならない。
最近の中国ニュースによれば、共産党独裁の中国で最高指導者の習近平は、学校の教科書の内容と子供が通う学習塾の経営を、彼の考えに基づいて「指導」(強制的に変更)すると発表した。当初は大目に見ていたインターネット決裁企業が予想以上に利用者を獲得し収益を上げたので、共産党は営業の制限を始めた。人気俳優がインターネットで協賛金や限定商品の巨額な売上に成功したので、共産党はその派手な行動を禁止した。二〇一九年秋に中国の湖北省武漢市で発生したと言う「新型コロナ感染症」は、共産党独裁の強制力で「蔓延の抑制」に成功したことも事実だ。
いまや世界中の電話会社の収益は、固定線事業では赤字でも無線事業では黒字と言う傾向である。要するに基本的にアナログ方式の有線通信で高速データを送ろうとすると、デジタル方式の無線通信の高速データの価格性能と競争できないのだ。交換機を使用した固定線通信(音声とファクス)では動画など高速データを送れず利用者が激減した。その一方、無線回線の利用は「スマホ携帯」の手軽さから、時間当たりの利用料が高いにもかかわらず激増した。デジタル通信技術の進歩で、高速無線データ通信が可能になり、二〇〇〇年頃から高品質の音声や高解像度の動画の通信が可能になった。デジタル無線方式の泣き所は、NTTのデータ幹線へ無線基地局を接続して、無線データを送受するためのアンテナを通信条件が良好な高いビルの上に設置する費用も馬鹿にならないことだ。第三世代の携帯無線ではアンテナの設置にもそれほどの費用がかからなかったが、第五世代の無線では電波の送受信の感度を上げるために、大型のアンテナと受信条件が良好な設置場所の確保が困難になっている。
成長期の子供の「スマホ携帯」の使用制限については、改めて書くこととしたい。
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