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特集記事

Vol.252 -- 2021 年 04 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」 徳川文武

第百四十三回 コロナぼけ、花見ぼけ、日本ぼけ

コロナぼけ
 二〇一九年後半に新型コロナ系ビールス感染症が中国で発生し、これは中国国外にも拡がり未だに世界への拡大は止まらない。三月十六日夜のニュースでは、日本国内のコロナ感染者は約四十五万人、死者数は約九千人であるが、米国は世界最多で約三千万人の感染者、死者数は約五十四万人と報じている。日米の新型コロナ感染状況の大きな差は、生活習慣の違いから生じると考えられる。米国には強力な疾病予防管理センタがあるのに、トランプ政権では国民の健康を守るための生活指導を積極的に行わなかった。

 至近距離で飛沫伝染するコロナ系感染症は、伝染病保険医などの適切な生活指導が欠かせない。
 疫病の発生は予測が困難であり、通常は他の疫病に有効だったワクチンや予防薬が今回も有効だとは限らない。日本は「ワクチンや予防薬」の開発と入手の両面で全く手遅れになった。疫害は生物兵器攻撃やサイバー攻撃や武力攻撃と共に重大な災害の一つで、危険に対する準備が全く遅れていることをさらけ出した。テレビ番組では日本の防衛施設の近くに外国人が土地を所有している例が多数あり、日本にこれを制限する法律はなく、駐留米軍は反応したが、日本政府は関心もないと言う。我が国の危機管理は十分なのか。

花見ぼけ
 人間も自然界の生き物だから気温が上がると日常生活は生理的に活発になる。より多くの人々が戸外に出かける「桜の花見」や「週末の買物」などでは、多くの場合「集団で人が寄り集まって飲食する」ことになる。昨今、気温は上がり陽ざしも誘惑的、三月は卒業式、四月は入学式と入社式、東京の感染者数は本日十七日で何と四百人超えとなる。実際、我が家の最寄り駅、二子玉川や桜新町や成城学園前では、街角のコンビニで買った軽食を街頭で食べながら、若者六人が「直近距離」でマスクもかけず会話に興じていた。政府や自治体がお願いしても、その制限をすり抜けるような野外集会や直近飲食は減らない。また現在使用している種々のコロナ感染症検査方法や検査数も十分とは言えない。国内の検査装置メーカ製品は使用されていないのか。

 日本では二月下旬に政府が再度の緊急事態宣言を出して、さらに一か月の延長を行い、屋内飲食を夜八時までとした。菅総理大臣はついにコロナ専門家会議を説得して、首都圏の懸案を自我の理屈で納得させた。宣言解除の最大の理由は、感染症の地域の病床と医療担当者の「逼迫度が危険でない」と言うことだ。我々大衆は揺れ動く疫病専門家たちの複雑な考え方がなかなか理解できない。日本では四段階のコロナ感染度と少ない標本数の感染者数により「蔓延爆発の危険度」を予測しているが、最近英国から入って来たコロナビールスの「頻繁変異株」が疫病専門家たちを悩ませている。レストランなど閉じられた空間で「歓談飲食」するよりも、公園などの広場と言う開いた空間で「歓談飲食」する方が飛沫感染予防に役立つ。政府や自治体も飛沫感染予防に役立つ日常行動の常態化する「広報活動」を積極的に行うことが重要だと思う。

日本ぼけ
 日本は世界でもガラバゴス化が進んでいる。島国と言うことでは、英国としばしば比較されるが、決定的な違いが日本の時代遅れを年と共に増長している。日本に領土問題はあるのかと言う質問に対して、日本政府の答えは「ない」である。私の答えは「大あり」である。日本政府の答えは「日本は悪いことを何もしていない」と言う意思表示なのだろうが、私の答えは「自国領土であるにもかかわらず、尖閣も竹島も北方領土も、日本が思うようになっていない」と言う意味で「大あり」なのだ。

 日本は西暦前一世紀頃から中国の歴史書に倭の奴国王や卑弥呼と言う名前で現れ、十世紀に唐が滅びるまでに中国の歴史物語、仏教の経典、漢詩の古典は、渡来人によりもたらされた。日本は古来からの日本語を捨てず中国から伝来した漢字に日本語の発音を当てはめて中国の漢字圏に仲間入りしたが、「古い中國思想」から脱皮できない。私見ではアジア世界は十六、七世紀に西欧列強の進出によって植民地化された。日本は江戸時代の鎖国により植民地化をせき止め、江戸時代末期に、産業革命で技術の近代化を果たした英米仏の先進技術をうまく取り込み、明治維新による近代化でいち早く産業国になった。しかし、日本には欧米が経験した市民革命を土台とした民主主義がのびず、太平洋戦争後も保守政権の支配が続く。国民の政治に対する関心と自覚を待つほかない。

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