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徳川文武の「太平洋から見える日本」
第百三十二回 疫病災害が対処できない日本
PCR試験と隔離病床の確保
現在のところ特効薬も予防薬もないこのコロナビールスの感染を回避するには、感染者の飛沫を直接身体に当てないことが必要である。感染者が体外に出す飛沫に含まれるビールスは、飛沫が乾燥すれば効力が落ちる。他人との距離を一定以上に保てば飛沫感染を回避できる。この疫病の典型的症状は感染して二週間ほどで高熱になり重度だと肺炎となり生命を落とす。飛沫を受けても免疫力が強ければ感染症状は進行しない。感染はPCR検査の陽性で判定するが、陰性を示しても感染しているなど不明なことが多いと言う。飛沫感染の回避には、相手と向き合わないとか距離を離すことが良い。また飛沫が浸透しない顔マスクをしていれば、飛沫を他人から受けないし、他人に自分の飛沫を飛ばすこともないだろう。
疫病感染対処の現状
毎年発生する流行性感冒は予防接種も実施され安定している。でも今回のビールスの感染は、第一に治療薬も予防薬もなく、第二に飛沫感染者が指数的に増加し続け、 第三に効率的でない縦割りの検査体制が不足する機材と医療人員の活用をさらに低下させている(治療の実情を知らない管理側が現場の検査体制を作成)、第四に検査を要する患者の検査をする隔離診察室と医療人員が不足、第五に防疫資材(マスク、着衣、消毒液など)の不足、第六に人工呼吸器と操作人員の不足、第七に感染者の感染履歴が不明、第八に防疫病院と防疫医療人員が少ないなど。平和な日本には、生物兵器を扱える施設は、防衛省と国立伝染病研究所位しかない。日本は隔離病棟で伝染病感染者を扱った経験者が少なすぎる。
緊急事態宣言
日本の場合は国民に対する「要請」で罰則はない。これは性善説に基づく。国民に対する給付額は、世帯収入上限以下に対して三十万円の自民党案であった。しかし世帯収入の認定に手間暇がかかるので、国民一人当たりに十万円給付の公明党案に変更された。欧米諸国では国民に対する行動「指示」が適用される。性悪説に基づいている。
現代の社会生活では、混雑する通勤通学も多く、多くの他人と会う商売も多い。仲間と一緒の飲食も多い。今回のように疫病が蔓延する環境で数ケ月程度の自宅待機になると、旅行も宴会もスポーツも予約が取り消しになる。小さな個人企業なら借り店舗の家賃や従業員の賃金が払えなくなる。派遣社員としての賃金がなければ子供の塾の費用も払えない。親の介護費用が払えないかも知れない。疫病の感染回避のために政府の在宅指示が出たり、隔離病室で仕事時間を過ごすとその時間分の賃金の補償なしでは、収入は損失になる。
災害融資や支援金申請
昨年八月に、リーマンショック並みの経済危機がない限り「消費税を上げる」と言って、安倍政権は増税を実行した。日本における今回のコロナビールス災害にリーマンショックに対する以上の「緊急経済対策」をこの三月に策定したが、未だに何も実行されてはいない。
欧米諸国では、人々が接近集合する学校や事務所や飲食店や交通機関の利用を一定の期間禁止して自宅待機を指示し、生じた企業や個人の損害を補填する現金支給を短期間でしている。日本の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」は、例によって読解困難な文面で書かれ、収入補償から外れる場合があまりにも多い。これが施行されるには、数ケ月以上かかると言う。テレビ番組に海外から出場したヨーロッパ在住の日本人妻は、申し込んで数日、それも外国人に対してさえ、こんなに反応が早いのは感激だと話していた。
疫病感染封止で経済活動も失速
今回の感染災害の初期対応は、余りにも着手が遅く、安倍政権の「即効的実行力」の欠如を露呈した。一方、中国の春節休暇の来日団体観光客は、中国政府が出した国外旅行の禁止で激減した。日本の観光地、百貨店、雑貨店舗、ショッピングセンター、ホテル、観光バスの団体予約は軒並み取消しになった。ビールスによる疫病の感染を減らすには、一定期間人間の接触と移動を制限するのが急務である。
中国では春節時期に多くの農業と工業が疫病で生産が停止したが、中国から日本に輸出される工業部品や食料品や疫病防止に必須の顔マスク、医療用マスクなどは日本で国産を始めたものの品不足で、自動車生産もできない。政府の「防疫のための集団行動抑制」で在宅奨励、国民のための外食産業の売上低下は、出前食の増加、惣菜屋、駅中スーパー食品などの売上増加に移る。政府の素早い反応でつなぎ融資や支援が国民を助ける結果となる。
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