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特集記事

Vol.234 -- 2019 年 10 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」 徳川文武

第百二十五回 野菜収穫ロボット

 今夜のテレビ番組では、アスパラガス農家の収穫をロボットが行う場面が紹介された。日本でも高専のロボットコンテストが人気番組になってから、すでに十年以上になる。半導体の処理速度もデータ容量も初期に比べると何百万倍にも改善した。機械運動の精度は、コンピュータ言語の進歩と有線無線の通信技術の進歩に助けられた。おかげで、宇宙に飛び立ったJAXAの飛翔体が数年間も飛行して、天体の土壌を拾得して地球に戻ってくる時代になった。無線で操縦され空中を飛ぶものはドローンとも呼ばれ、監視や薬剤散布やアマゾンが発表したように試験的に商品配達に使われるようにもなった。米国では一九八〇年代に軍用の無人機ドローンが開発され、イラク戦争で偵察や無人攻撃に試用された。

身代りの仕事屋、ロボット
 テレビ番組に出演した「収穫ロボット」の、鎌倉で開発試作実験をしている「原型(試作品、プロトタイプ)」が紹介された。開発者の彼は嬉しくなるような事業展開を話した。本体の試作には市販の部品を組合せ、百万円もあれば作れると言う。「収穫ロボット」に付いているカメラが人工頭脳により温室に生えているアスパラガス苗のうち収穫したい寸法のものを選択し、ロボットの腕に付いたナイフで切取り、かごの中に積込むと言う作業を自動で行う。彼はこの「収穫ロボット」を販売せずに賃貸しすると言う。仕事をする機械は「財産」ではなく「道具」だと考えた方が良い。

 この「収穫ロボット」の開発と運用には政府の資金援助があるだろう。「収穫ロボット」を使用する農家には賃借りの方が買取りよりも負担は少ない。試作品はいつ動作不良になるか分からず、技術的改良を続ける必要がある。試作に関わった「収穫ロボット」は訓練を受けた作業員付きか、農家への指導付きで賃貸しすればよい。収穫作業に携われば、「収穫ロボット」の改良に役立つさまざまなデータや経験が得られる。

技術進歩で情報の流出
 ロボット、ドローン、ソフトウエア制作の技術的基盤は世界的に定着している。産業用ロボットは一九六〇年代の高度成長の日本にいち早く採用された。いまや世界のドローンの七割以上は中国で生産される。日本が敗退した産業分野は数知れないほど多い。家電品(生活から映像音響)と携帯電話も二〇〇〇年頃には撤退が始まる。それでも部品供給では日本は、まだ大きな市場を持っている。

 数十年来、携帯電話やスマートフォンと言う「携帯通信端末」が「人々の生活」を支配しはじめた。「固定電話」の何倍もの料金を払っても、手軽な「携帯端末」を手放すことが出来なくなった。あなたの周辺を見て御覧なさい。人々は、電車に乗っても、(車を運転しても)、歩いても、立止まっても、買物するにも「携帯端末」から離れることが出来ない。「携帯端末」を使用する人々の行動は、「応用プログラム」の「便利なサービス」に支配され、公共通信路などのパイプを通してデータが送られるため、グーグルなどに常に監視されている。特別料金を支払って私設のパイプを通さなければ、これを避けることは出来ない。

 「便利なサービス」の例は、家電品のスイッチを決めた時間に入れてくれるとか、自宅のカメラによるペットの行動の監視である。その情報は、サービスを提供した業者がビッグデータとして誰か他人に流し、商売に流用している。無料のサービスには、そのデータを流用されると言う同意が求められている。フェイスブックは何百万人もの会員の情報を、英国のある商売をする企業に巨額の対価で売り払ったのが発覚して、社会的に大きな非難を浴びた。

 そのうち、中国製ドローンの操縦がファウェイの第五世代の携帯電話で行われると、関連情報は中国に吸上げられる。米国のトランプ大統領は、米国が時間と金をかけて開発した技術を中国が盗んでいると怒っているが、その気持ちは理解できる。現在、中国の情報局は、街中に設置したカメラの映像と携帯端末から、個人の情報を集めているらしい。一帯一路を推進する中国は、ファウェイの携帯電話網をまず米国に広げたかっただろう。私見では、中国ファウェイの第五世代携帯電話の日本国内使用は、日本の安全を脅かすことになりかねないと警告したい。

 政府による良い意味での都市計画の推進には、現在のように国土を安易に民間に払い下げず官有とし、長期計画に基づいた賃貸しをするべきである。とくに日本を乗取ろうとする外国民が、官有にせよ私有にせよ、わが国にある不動産を最終的に取得することを阻止する必要がある。このような危機に瀕していると思われるのは、島根県や北海道の不動産である。私が見るに、外国では役所の計画で必要な道路を作るために、必要な個人所有の不動産は、条例で役所が取得できるが、日本では個人所有者がごねるために公共工事が思うように進まないと言われる。日本の大都市では街路の歩道の幅が不十分な場所が多く、障がい者を含む歩行者の安全な通行が阻害されている。地表の歩道も横断歩道との接続部で段差があったり進行横方向に傾斜があったりして障がい者の歩行や車椅子の通行には不具合な場合も多い。日本では地表の歩道では車両である自転車が交通規則に従わないため歩行者や障がい者は大きな危険にさらされる。また、都市の人口過密化のため通路が地表から屋内や地下へ拡張され地下鉄道と接続される場合が多い。この場合、障がい者が乗換えるにはエレベータやエスカレータが適当であるが、その設置空間が十分無く、階段通路に沿って移送レールが苦し紛れに設けられているものの、扱いの不具合さに耐えかねて不使用の場合が多い。また障がい者通路が後付けのため不本意に長い場合が実に多い。

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