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特集記事

Vol.224 -- 2018 年 12 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」 徳川文武

第百十五回 資源の有効利用と適切な廃棄処理

 発掘により資源の埋蔵量が減ると、発掘の費用が増加する。経済的に見合わなくなれば、代替資源を発掘するようになる。地球圏外への脱出に成功した人類は、太陽系の惑星の資源探査のために人工衛星を飛ばして宇宙の物理を解明し始めた。惑星の領有権と資源争奪戦もすでに始まっている。ロシアが半世紀も前に打ち上げた宇宙船で宇宙環境の研究が進み、ロボットを送り生物や資源の探索も始まっている。一方、半径六千キロもある地球の内部は海底十キロ以内しか到達できず、それ以上は超音波反射による観測しかできていない。

消費王国と浪費王国
 世界の消費王国は資源も豊かな米国で、浪費王国は資源に乏しい日本だと感じている。IMFによると、二〇一八年予測の日米の国民一人当たりの名目GDPを比較すると、日本は年間四万米ドル、米国は六万米ドルとなる。ちなみに、中国は一万米ドル以下、ドイツは四万三千米ドルとなっている。
 米国は移民の国であるが、国内で貧富の格差が大きい一方、私の三十年の滞米生活の観察では、不要品再利用率が日本と比較すると高いように見える。米国と言う国は、ごくわずかな大富豪と一握りの優秀な人材により動かされている国であるが、元々貧しい移民で成長した国であるため、現在も昔を忘れない倹約の精神が旺盛である。日本も貧富の差が大きく、農水省によれば年間千七百万トンの食品が無駄に廃棄される。日本人は潔癖性なので中古商品の再利用率が低い。
 太平洋戦争中に育った私たちは、軍国主義の侵略戦争のため物資が不足し、親族からお下がりと言って衣服をもらって使うことが多かった。太平洋戦争後の経済成長期に、安い家具を買って使い引越の時に捨てて行くと言う生活容態は、日本のアパート住人にとっては見慣れた習慣であった。日本の貸家やアパートの畳ふとん生活では、押入れに布団を収納するので、この収納空間が無駄になり室内の家具が多かった。最近はベッドと作り付けの収納空間の生活に移行している。

売切りから賃貸や共用へ
 我々日本人は、他人から物を借りるより新品を買う方が普通だった。品物を扱う店も月賦や賃貸するよりも、一回で全額支払いの現金売り切りを好んだ。しかし現在のように車にいろいろな犯罪が多くなると、自分の車の管理も難しい。車を頻繁に運転しない大都市の人々は、必要な時に賃貸しを利用する方が、維持の手間も費用も少ないことに気がつき始めた。車の使用状況は人々の仕事の仕方や住居状況により大幅に異なる。社宅やアパートで近隣に住んで車を共用する人々も増えている。車の共用仲間は、車検や修理や駐車料金や清掃などの負担を分け合い軽減される。現在の私は完全に公共交通に依存する生活をしている。自宅から最寄り駅へ行く目的で使う自家用車の年間維持費などを三十万円とすると、その距離のタクシー料金を千円として、タクシーを年に三百回乗り降りできることになるから、公共交通の方が圧倒的に安い。

プラスチック廃棄物
 買った食品の透明プラスチック容器やポリ袋が普及し始めたのはベトナム戦争あとだ。それ以前は経木、筍、皮やハトロン紙、古新聞紙などポリ袋の代りに使われていた。ここ十年以上テレビで大洋沿岸に大量に廃棄漂着しているプラスチック容器と「ポリ袋」の映像が報道されており、アジア大陸東部で大量廃棄されて日本近海へも漂着している。自然界へ廃棄された石油系プラスチック製品は、鳥や魚に呑込まれても消化されず、海中へ散乱した石油系プラスチック微粒子が生体内に残留して遺伝子に異常を生じると危惧されている。地球の気象と地理に大きな変化を及ぼす地球温暖化は、高度経済成長と豊かな社会による畜肉需要の増加による温暖化ガス(炭酸ガスやメタンガス)激増が原因とされている。そうであれば、世界各国が温暖化ガスの減少に向けて協力することが必要になる。
 欧米では数十年も前から、ポリ袋やポリ容器を回収し環境汚染を抑制した廃棄処理をし、買物には自分の布袋を使うよう呼び掛けている。しかし物の受渡しに「何でも箱や袋に入れる習慣」がある「世界の包装王国」日本では、ポリ袋節減運動は中々協力を得られてない。最近は植物又は生物由来のプラスチックで作ったポリ袋が生物に害を及ぼさないと言われているが、まだ製造価格が高いのでなかなか普及していない。
 工業生産規模が大きい国では消費も旺盛であるため、温暖化ガス発生量を減らす発電方法と石油由来のプラスチックの生産を削減したり廃棄処理を開発して実行することが重要だ。

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