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特集記事

Vol.218 -- 2018 年 06 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」 徳川文武

第一〇九回 トランプ大統領と安倍総理は何を考える

 米国の貨幣や紙幣には「われ神(GOD)を信じる」と書いてある。ひょっとしたら、「われ金(GOLD)を信じる」の間違いではないか。トランプ大統領は米国最大勢力のキリスト教福音派(エバンジェリカルズ)の支援を巧みに使い、昨年の大統領選挙に勝利した。福音派はキリスト教の宗派ではなく、聖書を尊重するキリスト教信者の集団だが、米国人口の四分の一にもなる。トランプ大統領は、河童の皿のような形状のキッパを頭上に被り、米国現役大統領として初めて「嘆きの壁」で祈りを捧げた。選挙公約の一つは、米国のイスラエル大使館を商都テルアビブからパレスチナの中心都市イェルサレムに移転することだったが、今年五月中旬に行われ、ユダヤ人男性と結婚し、キリスト教からユダヤ教へ改宗した大統領の娘が式典に出席することになった。米国のこの行動はイスラム諸国を激怒させた。

 世界の宗教人口は、二〇一〇年にキリスト教二十二億人、イスラム教十六億人になった。人口増加ではイスラム教地域の増加がより早く、同様の人口増加率が続けば、二〇五〇年には両者が二十九億人ずつになる。経済格差から見ると、カトリック地域(北中南米)とイスラム地域(アフリカ、ユーラシア)に低収入層が多い。歴史的に見て、軍事政権や暴動が多いのは低収入層が多い国である。米国の総人口はすでに三億人を越えているが、低収入層には低技能者の「黒人労働者と白人労働者」や「いわゆるラティノ(スペイン語系)」の人々が多い。彼らは、貧しいので十分な教育が受けられず収入が低い職にしか就けないという、「負の連鎖」から中々脱出できない。

 トランプ大統領は従来の米国大統領と比べると、「何が出来るか」が「予測できない」。一方、安倍総理は「出来ないこと」が「予測できる」。トランプ大統領には、特有の「動物的感覚」、これは「不動産事業」と言うより、「不動産商人」と言った方が当たっているのかもしれない。私はトランプ大統領がもっと「世界の歴史を学ぶべき」だと感じている。かれは「メキシコで操業して米国へ輸出する自動車産業」を「米国の雇用を奪う不当な産業」だとして、米国で生産するように切り替えさせた。結果は、米国での生産の人件費は間違いなく高くなり、その自動車を買う米国の消費者の懐を苦しくする。米国での生産を安くしようとすれば、メキシコの場合よりも自動生産をする多額の投資が必要になり、雇用を減らす結果となる。私の理解では、人工頭脳のソフトウエアの開発は、世界中で米国が得意とする分野だと思う。米国のテスラやグーグルは自動車の自動運転の実用化を積極的に進めているものの、実用運転で安全な自動運転技術を実現するのが「如何に難しいか」、その技術はジャンボジェットや戦闘機の自動操縦よりもさらに困難だと言うことが身にしみただろう。日本の道路で自動車の自動運転をするのは「更に困難だ」

 トランプ大統領は「商売人感覚」で「強引なかけひき」をするのには慣れているかも知れない。それが「不動産商売」や「リゾート開発」なら、運が悪くても「破産や大赤字」で逃げ切れる。しかし、彼にいくら腕力があっても、「国連加盟国を無視」して「罪もない他国の人々を殺したり」、従来のように「米国の利益」ばかり優先して「世界の警察署」を演じるのは、よろしくない。私は、日本の安倍総理が米国のトランプ大統領の言いなりになって、北朝鮮のミサイルに対抗するために、「役に立たない兵器」を買わされるのは大反対だ。吹っかけ値段のF−35もオスプレイもミサイル迎撃システムも思い切り値切ったらどうか。さもなければ日本は、そんな無駄な兵器が必要ないような外交をすることが賢明だ。私は韓国と北朝鮮が早く統一されて一国になるよう望む。第二次大戦・太平洋戦争の戦勝国には「核兵器」を保有する国がある。それなら、北朝鮮が核兵器を持っても、それを日本に向けて行使しなければ構わないではないか。北朝鮮が一九七〇年代、八十年代に日本人を拉致したのは許せない。それは人道上、人権無視の行為であるが、国連に提訴したからと言って、国連加盟国が四、五十年前の拉致被害者解放を助けてくれるかどうかは分からない。日本の領土問題も国連で提訴して解決するとは思えない。物事は事件が起ってから、余りに長い時間が経ったり、他国の関心が薄いことだったりすると、解決を期待することは困難だ。一口で言えば、日本政府が「熱意不足と技術不足」だったことである。

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