特集記事
徳川文武の「太平洋から見える日本」
第一〇二回 強気の安倍総理が作り出す北朝鮮リスク
今年の春以来、国会は森友事件と加計事件で紛糾し、八月末北朝鮮のミサイル発射実験でついに北海道襟裳岬上空を飛越える事態が発生した。災害発生に際し、国が住民に緊急情報を伝達するよう設計された「瞬時緊急警報」は、二〇〇六年の実証実験から全国展開まで十年を要したが、運用面で未だに多くの問題がある。とくに二〇一一年に起こった東日本大地震と大津波(「瞬時緊急警報」のデータは国民に知らせず海外に送られたと非難された)以来、何件も起こっている自然災害に対して、「瞬時緊急警報」は期待される威力を発揮していないと受止める人も多い。
避難する時間も場所もない
緊急事態は、自然災害から他国による軍事的攻撃にいたるまで様々である。これに対応した「避難指示内容」の検討は現時点では不十分なばかりか、今回は北朝鮮から僅か四分で弾道ミサイルが北海道上空に到達するため、事前探知が出来なかったのか避難行動をとる時間がなかった。おまけに今回配信された指示は「頑丈な建物や地下に避難」だったが、多くの住民には、頑丈な建物も地下避難所も近くにはないのが実情だった。このミサイルは日本領土に破片も落とさずに襟裳岬から千二百キロも先の海中に落ちたのは運が良かった。事態に応じた避難の学習と訓練を定期的に受けることが必要になる。また日本では火山爆発や、地震、津波、豪雨に起因する崖崩れや洪水が頻繁に起こるので、自然災害の科学的研究と土地利用を含む保全対策も欠かせない。
北朝鮮による攻撃の回避
米国のトランプ大統領と日本の安倍総理は共に劇場演出型、自己顕示欲の強さと言う点でもよく似ている。物を考えるよりも先に口に言葉がほとばしるのは、国会答弁などでも如実に示される。安倍総理は、米国の権力を傘に着て「核兵器とミサイルを放棄しない北朝鮮に対して、全世界の一致した圧力が必須」と国連総会で述べた。この安倍総理の発言に対して、北朝鮮の金正恩総書記は米国だけでなく日本も単独に攻撃する対象だと反発した。安倍総理の北朝鮮に対する最近の発言は、日本の安全と防衛財政を危うくする。最近日本国内で他人に迷惑をかける自動車の煽り運転で、逆切れした運転手により正当な自動車の運転手が危害を加えられ、事故に追込まれ死に至る事件も増えている。現在の北朝鮮は不当な運転をする運転手にあたるが、煽らなければ日本が北朝鮮のミサイルで攻撃されるリスクは大幅に低くなると私は考える。
米韓合同演習が示す米国の軍事力
この十月中旬始まった米韓合同演習では、空母原潜などを北朝鮮が面する公海上に送込み、戦略爆撃機はグアム基地からすでに北朝鮮周辺を飛行した。米国本土を攻撃する弾道ミサイルは未完成なものの、北朝鮮の潜水艦ミサイルで米本土攻撃は可能だ。一方、先般の地下核爆発実験も行い、次は太平洋で核爆発の実験をする噂もあり、北朝鮮からグアムをミサイル攻撃する能力はすでに有すると言われている。北朝鮮が日本にミサイルを飛ばすことは朝飯前だが、日本だけではこれを迎撃する能力を持つ「ミサイル迎撃システム」が十分でない。最新型のイージス・アショアは1基800億円程度、1000億円以上もするサードより調達価格が安いうえ、配備数が少なくて済むと言うが、このようなミサイル迎撃システムが、実際に北朝鮮から打上げられたミサイルを撃墜できる保証はない。
北朝鮮ミサイルを迎撃する能力
最近北朝鮮が開発し発射実験しているとされる多弾頭型や複数箇所から同時打上げされる複数のミサイルを、現在の米国が開発した迎撃システムで全て撃ち落すことは不可能だろう。工業国日本の国内にはミサイル攻撃により大災害を起こすような標的施設(発電所、化学工場、飛行場、鉄道、大都市の地下街など)が多数ある。かつてオーム真理教が起こしたような化学物質や米国で使われた「炭そ菌」のような細菌を撒き散らす位のことは、今年マレイシアで起こった金総書記の親族の化学物質による殺害からすれば容易なことだ。北朝鮮やイスラム国を敵に回して日本国民に災難を誘発するような安倍総理の言動はいかがなものか。日本が多数のミサイル迎撃設備を買い込めば、トランプ大統領は喜ぶだろうが、この大赤字の国家財政で国民の税金をさらに無駄に使うのは慎むべきだ。
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