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特集記事

Vol.175 -- 2014 年 11 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」

第六十六回 日本は米国や中国に勝てるか
 現在の日本は、平和すぎて、平等すぎて、外界への関心がなさ過ぎ、ぼけている。その一方、会話もせずに話せば分かると思い込み、傍若無人な略奪独裁帝国に見える隣国に対抗できない。意見の違いだと無防備で正当性を主張しても、相手は欲望を満たすためあらゆる手段で着々と行動する。数千年以上の昔からこの国が変らないのは歴史が証明する。千年以上もその文物に接して、我々は肝心なことを読み取れなかったのか。

米国での私の体験
私はシリコンバレイで米国通信機メーカーで働いていたが、カナダ事業所から台湾人技術者が移動してきた。そののち彼の紹介で一九九四年にスプリント通信会社の先端技術研究所で働くようになった。そこには七十名ほどの技術者が働いていたが、中国系技術者は十数名いた。所長の下に五つほどのグループがあり、私は彼の紹介で彼が属する台湾人が率いる八人のグループに入った。二人の台湾系中国人と一人の香港系中国人、エジプト系が一人、ロシア系が一人、フィリピン系が一人、米国生まれの白人系が一人いた。ここで特記したいことが二つある。

第一は私を紹介してくれた台湾人は面倒見も評判も良かった。私が日本人だと言うことで、いろいろ親切にしてもくれた。当時スプリントはAT&Tの次に所帯が大きい電話会社であったが、経営の悪化による解雇で従業員が次第に減ってきた。二〇〇〇年頃になると我々のグループを率いる台湾人のリーダは昇格して、技術者も五名ほどが転入、彼の下に二つのグループが出来た。新たなグループリーダは転入した台湾人、私が属するグループのリーダは新たに入社し東海岸から来た衛星通信の経験がある中国系になった。さらに景気が悪くなり、技術系では台湾系と中国系の全員とロシア系一人は最後まで残った。

第二はこの台湾系友人の要領の良さだった。私は当時フォルクスワーゲンの中古車を乗り回していたが、買ったときすでに十三万マイル(二十万キロ)のポンコツだった。だから応急処置ができるようにジャンパーワイヤをいつも車に積んでいた。私の台湾系友人はそれを知っていて、周りの人の車が故障してジャンパーワイヤが必要になると、いつでも私を紹介したが、かれらはこの台湾人には深謝するが、私には礼も言わない。そう言うことがあるのだなと思った。

多くの日本企業では自社製品を使うソフトウエアを米国などで現地スタッフが開発していた。彼らが言うには、日系企業の現地事務所で日常起こる決裁が「その詳細を把握できない日本本社」で行われるため、不適切な判断や時間の遅れ、挙句の果てには現地技術者は信頼されていないと言う感情を持つらしい。その現地スタッフの一人は友人でMIT出身のソフトウエア技術者だった。

中国系国での日本企業人の体験
「日本巨大企業に働く彼」はまさに働き盛りの管理職、エネルギー関連部品を製造する工場で働いている。海外にも拠点があり、中国やシンガポールにも現地工場がある。工場がうまく動くためには、日本人管理者と現地人現場スタッフやその下で働く現地従業員との信頼関係にかかっていると言う。彼の観察によれば、日本の企業人は必要な信頼関係を築くのが苦手だと言う。外交でもそうだが、我々日本人は自分のやり方に固執し、日本社会で通用する目先しか考えない。最終的な成果をあげるには、会話もせず現地人に日本流のやり方を要求するよりも、意思疎通により現地人のやり方をうまく利用する方が良いと言う。

「日本巨大企業に働く彼」は、東京でビデオと携帯電話と普通電話とを並行して使って、「中国人の顧客」との営業会議があったが、日本は中国には勝てるわけがないと言った。部品の買入れとそれを使った応用品を販売する、この「中国の顧客」は、部品を売り込む「日本の企業」のブランドを利用して、自分の事業を拡大していると言うのだ。「日本の企業」は、自社の部品が売れるだけでその先は考えない。この中国の顧客は、自分の新しい客をこの会議に参加させると言う。多くの日本企業には一次元的戦略しかないが、中国企業は遠大な戦略を意識して現在の行動をしている。

先日のNHK時論公論は、オリンピックの目標はメダル数なのかと問いかけた。英国が誇ったのは、ロンドン大会を契機に国内のスポーツ普及が大きく改善されたことだと言う。日本人の面子主義は中国人の中華思想に対応すると考え、個別の営業成績やメダル数よりも、もっと大きな戦略が、現在の日本の立場を改善し国際競争を有利にするだろう。

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