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特集記事

Vol.174 -- 2014 年 10 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」

第六十五回 シリコンバレイで売った家が五割の値上り
 二〇一四年九月、シリコンバレイは景気に沸いている。それはグーグル、アップル、インテルなどここに本社があるハイテク企業のおかげだ。とくに事業の拡大が激しいグーグルは大きく国内雇用を増やし、その従業員が落す金に地元マウンテンビュウはほくほく顔だ。私は一九九〇年に小さな家をマウンテンビュウ旧市街に二十七万ドルほどで買った。二〇〇〇年に不動産価格も上がったので買った家を四十九万ドルで売り、同時に少し大きめの家を同じ市内に六十三万ドルで買った。前の家を売った金は全部この家の購入にあて、売買手数料三万ドルを含み住宅ローンを組んだ。この家は二〇〇七年に八十万ドルで借家人に売った。その家の売り買いするために、双方で一人の不動産屋を雇って手数料を半分にまけてもらった。この度この家族に会って不動産の市場価格を聞くと、百二十万ドルに上がったと言う。七年間で五割、平均年率で七パーセント上がったことになる。グーグルの事業拡張のおかげで、この地域の不動産の需要が高くなり、アパートの家賃も大幅に上がっていると言う。

マウンテンビュウは、十九世紀初頭にサンホセとサンフランシスコ間の幌馬車停留所として始まった。第二次大戦後にここは航空宇宙分野と電子産業の開発に伴って急成長した。とくに一九五〇年から十年間で市内人口は六千六百人から三万一千人に、さらに二〇一四年には七万六千人に激増した。持ち家比率は四割くらいで、日本の磐田市とベルギーの都市が姉妹関係にある。市役所があるカストロ通りは航空宇宙局と海軍のモフェット空港に接続する目抜き通りだ。マウンテンビュウの北側境界線近くには、サンアントニオ買物センタがあり、その一角に一九五六年にトランジスタの発明者の一人である、ショックレイがトランジスタ工場を作った。その小さな建物は現在、食品市場になっている。カストロ通りは、グーグルなどハイテク産業の従業員が多く闊歩するため、とにかく歩道は人で一杯だ。しかし、ここ五、六年レストランや食品市場に変化が起きている。中華料理屋は半減し五、六軒あった中華市場のうち最大のものは看板が変った。以前この市場に働いていた中国人女性店員がさびしげに外を見ている。この頃は汗水流して一族で店を支える中国流の伝統は、もはや次世代の中国系若者には魅力がない。かつての日本料理屋も多くは日系以外のアジア系人によって所有経営されている。カストロ通りのレストランは国際色豊かになり、最近はバクラバと言うトルコ料理屋も現れた。シリコンバレイに数多あるドライブインは、かつて白人たちの所有経営であったが、数十年ほど前から、インド系人や中国系人の手に渡っている。

シリコンバレイも地域的に民族色が見られる。シリコンバレイ南部のサンホセ市北側に隣接するサンタクララ市の目抜き通り八十二号線、エルカミノ通りに沿う食品市場やレストランなどの店舗は韓国系人の経営が多く、北上してサニーベイル市に入ると、インド系人経営の食品市場やレストランが多くなる。サンタクララ市からマウンテンビュウ市に沿っては、イラン、アフガンなど回教系レストランが散在する。サンホセ市東部にはベトナム系人が多く住む町があり、当然ながらベトナム食品市場やベトナムレストランが多い。サンフランシスコとサンホセには日本町がある。サンホセの日本町の始まりは一九〇二年に遡り、果樹園で働く独身日本人季節労働者三千人ほどに対する仕出し業(給食センタ)だと言う。五年ほどして政府は、彼らの家族を日本から呼び寄せる許可を出した。そこには店舗が現れ次第に町の様相が出来上がってきた。一九二一年、政府は日本人女性の移住を禁じ、アジア系人と白人系人との結婚が違法になった。日本町では四割もの日系人が独身だった。一九四一年、西海岸の日系人の財産は没収され立退きと留置が始まる。サンタクララ郡の日系人三千人の大部分は、留置センタからワイオミング州にあるハートマウンテン収容所に百五十ポンドの家財を許されバスと鉄道を使って移動された。一九四四年に日系人収用法が解かれ、一九四七年までに四十の事業と百家族がこの地域に再開されたと言う。ダニエル井上さんとノーマンミネタさんは米国議会に多大の貢献をした日系人政治家だが、ミネタさんの生家と日系一世記念館はサンホセ日本町にある。いつからか資生堂もそこにある。若手カリフォルニア州議員民主党マイク本田は、米議会に慰安婦問題を提出しており、韓国系抗日活動家もこれを利用していると見られる。

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