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特集記事

Vol.170 -- 2014 年 06 月号

徳川文武の「太平洋から見える日本」

第六十一回 サイクロン型掃除機の発明家ダイソン

全く新しい原理で集塵する掃除機
村上龍のテレビ番組「カンブリア宮殿」で英国人発明家ダイソンの経歴とサイクロン型掃除機が紹介された。日本の量販店では、従来の紙パック(ごみ収納容器)型製品が激減し、八万円の値段で売られる元祖ダイソン製品と三万円で売られるダイソン技術提携のサイクロン型が掃除機の六割を占めると言う。ここでは、そのうち四割が高価な元祖ダイソン製品だ。米国東海岸で製品化したロボット型掃除機は、数年前から日本でも販売されるようになったが、一般の普及はまだ低調のようだ。二十五年前に開発されたサイクロン型掃除機は、資金難のため自社工場と販売ができなかった。ダイソンはその技術を西欧の企業に売ろうとしたが、彼らは紙パック型掃除機で十分だと考え、飛びつかなかった。しかし一九八五年、日本でダイソンから技術提携を受けたメーカが一社あり、ダイソンは資金面で大いに助かった。ダイソンはそれまでの資金調達は自分が発明した製品の売上もあったものの、大企業の傘下に入る道は選ばず、銀行の融資に頼ったと言う。

新製品開発の苦労
現在の形状(カタツムリ型)のサイクロン型掃除機の製品が出来上がったのは一九九三年だった。米国に住む私の友人は、もう十年以上前にサイクロン型掃除機を買っていた。そしていまや二〇一四年、インターネットでサイクロン型掃除機を検索すると、元祖ダイソンの安い製品は三万円から、日本メーカ製品が一万円台から売られている。日本では自動車の新車価格は相変わらず安くならないのに、家電製品や衣食分野ではどんどん安いものが出回る。世の中の掃除機にダイソン旋風が吹き、紙パック掃除機は駆逐される。ダイソンの広告の「吸引力が変らない」と言う売り文句はどれほどの効果があるのだろう。いまやサイクロン型掃除機の価格は、機種によっては、従来の紙パック掃除機と同程度にまで下がっている。

ダイソンの発明志向
現在のダイソン社の主要製品は「回転翼のない扇風機」と「サイクロン型掃除機」と「手洗い乾燥機能つき水道蛇口」などで、私の目には、何れも「高速噴射気流の制御技術」の応用製品である。私は電気分野が専門なので、このような噴射気流と言う物理分野の技術が一般の家電製品に応用されるのは驚きだった。ダイソンによれば、彼が重要視する製品とは、ソニーのウォークマンやホンダガソリン動力車(オートバイや自動車)、フランスのシトロエンの油圧空気ばね自動車、米国海軍の垂直上昇ジェット戦闘機などだと言う。何れも従来実現できなかった機能を製品に盛り込んだことだ。ダイソンは、とくに日本では営業(英語ではマーケティング)は「従来技術の延長でない革新的な技術の開発」には消極的だと言う。日本では研究開発は金食い虫と言われ、設計の小変更に比べて優先度が極めて低い。これこそ日本で革新的な技術が育たない理由だ。新技術の危険と需要低迷のため、どの企業も似たような製品を、似たような技術で実現する。その結果、より多く売るためには、値段を下げるしかなくなり、悪循環に陥る。それは使われる「同じ技術が商品価値を下げる」と言うデフレである。性能が多少上がる程度の技術力は、市場で競争力がない。

ダイソンの夢
ダイソン社は現在世界中に約五千人の従業員を持つと言われるが、次世代の技術者を育成のため私財を投じて「ジェイムズ・ダイソン賞」を二〇一〇年に創設し、受賞した若者はロンドン王立大学のダイソン館で起業するまで支援している。今回の準優勝は、日本で3Dプリンタを使い、数百万円かかっていた義手を四万円で開発した三人の若者に贈られたと言う。一方、一九五〇年に社長になったソニーの井深大は、その十年後の一九五九年に「ソニー小学校理科教育振興資金」による学校への製品贈呈を始め、一九七二年に「財団法人 ソニー教育振興財団」を設立した。ダイソンの目的は、世界にすぐれた技術を持つ若者がいることを世に知らせることだ。そして村上龍の質問に対し、自分は「他人に忠言をしない」、成功した人の経験は次にやることに役立つとは限らないと言う。新しいことには、誰もが同じ出発点にあると言う、きわめて白人らしい考えだと感じた。日本は世界一、二を争う「金持ち大国」である。もっと多くの金持ちが次世代を育てるため私財をつかい、税務署が教育に関する贈与税を大幅に下げるよう再検討をお願いしたい。例えば、日本からアップルのアイポッド、アイホン、アイパッドのような製品が出るためにも。


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