Vol.42 -- 2003 年 10 月号
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「なごり雪」の記録的大ヒットから27年、数々の名曲を世に送り続け、現在も世代を問わず多くのファンを魅了し続ける…。シンガーソングライターとして活躍されているイルカさんにインタビューしました。
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イルカさんと言えば「なごり雪」ですが、韓国語で歌われる「なごり雪」が映画の主題歌として流されることが(「チルソクの夏」配給・プレノンアッシュ)話題となっていますが、このお話があったきっかけは何だったのですか?
映画のストーリーが韓国の男の子と日本の女の子がスポーツ大会を通じて出会うという純愛のストーリーなのですが、映画の舞台となっている時代が1977年なんですよ。ちょうどその頃、監督さんの佐々部監督は高校生だったらしいんですね。日本のフォークが大好きな少年だったらしく、「大人になって、いつか映画を作るときは地元の下関を舞台にして、「なごり雪」をテーマソングにして映画を作りたい」と、10年以上も前から温めていたらしいんですよ。映画の舞台となった下関と釜山は、とても近い位置にある都市ということもあり、(フィクションではなく)実話をもとに作られた話なんです。監督さんから、この映画の説明を受けた後、「実はもう最初から「なごり雪」を主題歌にしたいって決めていたんだけど、韓国語で歌ってほしいんだ。どうだろうか」って話があったんです。
監督さんの熱意や、ストーリーにひかれて出演も含め引き受けられたということですか?
そうですね。去年がちょうど私のデビュー30周年という年で、「こころね」というアルバムを出したのですが、その中でいろんな曲を再録音したんですね。その中で「なごり雪」も昔と同じ松任谷正隆さんのアレンジで2002年バージョンという形でアレンジしてリニューアルしたんですね。とても良い出来だったので、11月に再びシングルを出そうという話は決まってたんですけど、その間の8月にこの映画のお話があったので、「それだったらもっと膨らませて、ハングルバージョンもそのシングルに入れよう」ということになったんです。ですから、27年ぶりに「なごり雪」を2002年バージョンで新しく出すという話と韓国語で歌ってくれないかという話がぴったり合ったんですよ。ただ、時間がギリギリだったので大変でした。ハングルにするのに、2週間程度しか時間がなかったです。韓国の友達に訳詞をしてもらい、ずいぶん助けてもらいました。ソウルでのレコーディングも2日間しか時間がなくて、何とかスケジュールをこなして帰ってきました。
韓国語はずいぶんと勉強されたのですか?
勉強しました。ハングルが読めないと歌詞も読めないんです。歌詞も全て韓国語で書かれるんですね。カタカナだと発音が違ってきちゃうんで。今回、美しい韓国語に訳してくれた韓国のシンガーソングライター、ユン・ヒョンジュさんに、ニューヨークでツアーをされている中、国際電話でテープに入れてもらったり…。3回くらいかな…。韓国語のレッスンを受けて読み方から発音までひと通り習いました。受験生みたいに、2週間ずっと韓国語ばかり。でも、少しずつ文字がわかってくるのがとても楽しく、良い勉強になりました。
かつてのヒット曲を新しくシングルにしたり、再レコーディングされたりするのは今の若者にとって斬新だったりするのではないでしょうか?
なごり雪に関しては、若い10代の子達がカバー曲として歌ってくれたり、「JINDOU(ジンドゥー)」というグループがラップで歌ってくれたりして…。市川市の出身でしたよね。実は、その子達から急に連絡があって「なごり雪のラップバージョンを作ったんだけれど、嬉しいことに渋谷クアトロで自分達のライブができるようになったから、飛び入りで来て歌ってくれませんか?」って言われました。おじさん達が企画で言っているなら行かないけれど、本人達が言ってくれたから飛び入りで参加しました。(渋谷クアトロは)椅子がないから、お客さんも会場にびっしり入って、すっごく盛り上がりましたよ。私はギター1本持っていって一緒に歌ったんですけどね。お客さんは、みんな10代の子ばっかりだったんです。本当は、私が行くと「あれは誰?」って言われたら嫌だからって言っていたんですけれど、「絶対そんなことはない、僕達が、なごり雪を歌うと大合唱になるんです。イルカコールが起きたりもするから、(会場に)来てください。イルカさんに来てもらって会場に集まってくれた皆へのプレゼントにしたいんだ」って言うから、じゃあ、しょうがないな〜、ボランティアで行ってやるよって。でも、すごく楽しかったですよ。皆良い子ばかりだったので。自分の活動をしていると普段はなかなか体験できないことでしょ?
貴重な体験でしたね。(11月号に続く)
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