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特集記事

Vol.38 -- 2003 年 06 月号


↑「飲酒による交通事故を撲滅させたい」と語る、東葛運転代行社の上野社長。東葛運転代行社は松戸市で唯一認可されている運転代行業者。

●交通死亡事故ワースト1

 東京都に比べ、自家用車の保有率が高く、車が生活必需品となっている千葉県。快適な生活を実現してくれるマイカーだが、車社会の地域には切り離せない問題がある。それは、交通事故の発生件数だ。千葉県は全国的に見てもその件数が極めて多く、解決すべき深刻な問題となっている。最も悲惨な事故である交通死亡事故の件数においては、平成15年5月現在で全国ワースト1という現況に、思わず目を覆いたくなる。
 松戸市でも、この件を深刻な問題として捕らえ、活発に議論が交わされている。昨年末、松戸市内で飲酒運転の車に道路を歩いていた人が次々に跳ね飛ばされ、5人もの犠牲者が出るという事故が発生した。運転者は安易に飲酒運転し、5人もの尊い命を奪ってしまう結果になった。
 松戸市で運転代行業を営む上野氏は、こうした飲酒運転の危険性を市民に訴え続けてきた。「飲酒運転をする人は、飲酒運転はいけないという認識はあります。しかし、酔いがさめただろう…とか、酔ってないだろう…と自分に都合良く判断してしまうのが問題です」。上野氏によると、飲酒による事故の原因は個人の意識の中にあるという。アルコールは酒の強い人・弱い人に関わらず、判断能力に影響が出る。つまり、酔いを自覚しにくいお酒の強い人こそ気を付けなければならないことになるのだ。
 現在、上野氏が経営する東葛運転代行社をはじめ、運転代行業者は変革期を迎えている。交通安全や利用者保護を目的に業者向けの法律(道路交通法)が整備され、損害賠償保険の契約や二種免許の取得が義務付けられた。悪質な業者が横行するのを防ぎ、業者が関わる交通事故を減少させるための動きである。この法律の施行で、許認可を受けずに営業することはできなくなった。こうした厳しい状況の中、上野氏は年に数回、全スタッフが参加する研修を実施している。若いスタッフに交通ルールとマナーを教え、交通事故を事前に防止する対策を講習、飲酒による交通死亡事故撲滅を会社の目標に掲げた。さらに、第33回常盤平さくら祭りでは、セーフティー松戸実行委員会の実行委員長として活躍。交通遺児募金ボランティアを目的に露店を出店し、その売上げ金を松戸市に全額寄付した。「代行業者が安全運転の模範として認知されれば飲酒運転に対する意識を変えていけます」と最後に力強く語ったのが印象的だった。
 交通死亡事故ワースト1の千葉県。しかし、交通死亡事故を撲滅するために尽力する人が存在するのも事実である。今後、その努力が実を結ぶかどうかは、個人がいかに飲酒運転に対する危機意識を持てるかにかかっている。


↑常盤平さくら祭りでボランティアを実施した「セーフティー松戸実行委員会」。
↑松戸市の交通遺児のために売上金を市に寄付した。

 

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