Vol.27 -- 2002 年 07 月号
↑深い海を思わせるようなブルーの氷コップ(右奥)と、黄緑の色替り乳白色の氷コップは、共に大正時代のもので色合いがとても美しい。手前は、ぼかしが入ったプレスの氷コップで昭和初期のもの。
提供:うつわの店「美釉」 |
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↑鎖国下でしたが、長崎から入ってくるオランダやイギリス製のガラスに魅せられ、それを模写しながら独創的な日本のガラスの歴史がつくられました。 |
素朴で温かみが感じられる器
切子のお皿や朝顔型の氷コップなど、生活の中にとけ込んだこれらの器は、大正から昭和初期にかけての日本のアンティークガラスです。何といっても日本の古いガラス器は、色彩と厚み、そして素朴な柔らかさが魅力です。研ぎ澄まされたような輝きのヨーロッパのガラス器とは違い、懐かしい雰囲気が漂い、どこか温かみが感じられます。デザインはヨーロッパのガラスを真似ているものの、切子に多いアールデコ風のデザインも、氷コップの乳白ぼかしの文様も手作りっぽくて愛らしい。また乳白色がかった氷コップやフリルのお皿は、プレスと呼ばれる型による量産品ですが、今のように統一して作ることが難しかった昔のものは、量産品といえども一枚一枚に表情があり深い味わいがあります。その他、蔦や花など植物の柄が多いクラヴィールというすり模様も古いガラス器に多い装飾です。どれもハイカラさんに愛用されていたのでしょうか。古きよきモダニズムが薫ります。
和食器の良さを持ち合わせたアンティークガラス器は、卓上に柔らかい雰囲気を与えてくれます。ビールのつまみに定番のそら豆や枝豆をのせたり、大きな器に夏の煮物、なす、かぼちゃ、車えびなどの炊き合わせをたっぷりと間をもたせて盛ったり、しっかりとしたヘビー級のビールにはピリ辛仕立て濃厚な味もぴったり。お気に入りのガラスの器で夏のしつらいを楽しみたいものです。
汗ばむ陽気になるとビールの味も格別です。東京で最初のビアホールは、明治32年、恵比寿ビールの経営で新橋に登場します。当時の新聞には「大評判大繁昌で会社はエビス顔」と記されたとか。新鮮な樽入りビールを一杯売りにするのが基本で、半リットルの値段は10銭ほどで、すでに国産ビール瓶は作られていたものの、流通コストなど何かと割高になる瓶詰めのビールに比べ、中身だけの値段ですむ一杯売りは安上がりでもありました。こうして評判となったビヤホールは各地へ広がり「カフェ」へと引き継がれていきました。 |
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