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Vol31 ----- 2002年11月号



い い も の
柔らかく揺らぎのある日本の灯り
  和ろうそく
↑ハゼはウルシ科の落葉高木で秋に紅葉します。和ろうそくには、存在感のある鉄の蜀台や九谷焼の絵皿も雰囲気を盛り上げてくれます。消すときは、口で吹いたり扇などであおいだりせず、芯切箸や芯切挟ではさみ消します。もしくは、灯明消を被せて消して下さい。
 和ろうそくに火を灯すと幻想的な炎がボッと立ち昇ります。その炎は、細く伸び上がったり、瞬いたり、生きているかのよう揺らき神秘的な空間を創りだします。今では、クリスマスや誕生日、結婚式などで使われる西洋ろうそくが主流となっていますが、日本には古くから伝わる灯りとして、和ろうそくがあります。西洋ろうそくが石油系のパラフィンから作られるのに対し、和ろうそくの原料は100%植物性で「ハゼの実」から抽出した蝋で作られます。このハゼ蝋は「木蝋」(もくろう)と呼ばれ、品質は高く「ジャパンワックス」の名称で海外にも広く知られているそうです。和ろうそく作りは全てが手作業で、灯芯は作るろうそくの大きさに合わせ切り揃えた和紙にいぐさを隙間なく巻きつけ、さらに薄く引き伸ばした真綿を巻いて作ります。その灯芯に蝋をかけていきますが、溶かした熱い蝋を手のひらで、かけては乾かし、乾いてはまたかけるという根気のいる作業を何度も何度も繰り返し徐々に太くしていくのです。繰り返し蝋をかけていくので、切口をよく見ると年輪のようになっています。この年輪は、外側と内側に境を作り蝋が溶けださない役目をしているそうです。また、上の方が少し太くなっていますが、これは火を灯した初めに大きな炎と明るさを得るためといいます。こうした古の知恵と熟練した職人の技を経て、はじめて手作りならではの美しい炎を放つ和めうそくが出来上がるのです。
和ろうそくの灯りは、柔らかく温かみがあり、何といっても光と闇を織りなす炎の揺らめきが魅力です。和ろうそくの灯りに浮かびだされる空間は、時間の流れがいつもと違うように感じられタイムスリップしたような不思議な気持ちになります。古の人は、ろうそくが一寸ごとに燃える時間を目安に゛刻゛を知ったといいます。揺らめく灯りの下でいただく「エビスビール」も一日の仕事が終わった後の密かな楽しみとして、大切な時間を刻んでくれるに違いありません。隅々まで照らすライトに慣れてしまった私たちですが、たまには揺らめく灯りに浸ってみるのも心が安らぎます。きっと柔らかな炎に包まれた贅沢な時間に出合えるはず。さっそく1本の和ろうそくとビールやスコッチなど、お気に入りの一杯で秋の夜長を楽しむことにいたしましょう。

 


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